極上御曹司に求愛されています
「今日の写真こそマスコミにばれたら大変なのに。あ、マスコミといえば、今日、取材でしたよね? うちの慧太先生のあと、悠生さんの取材があるって記者さんがおっしゃってました」
ふと思い出し、芹花は悠生に尋ねた。
「ああ、時間いっぱい質問されて、おまけに写真もたっぷり撮られて疲れた。だけど、記者さんからおすそわけだと言ってもらったどら焼きはすごくうまかった。それこそ、この肉よりも」
「え、どら焼きって、あの」
ハッとした芹花に、悠生が小さく笑った。
「記者さんたちが、天羽さんという気が利く女性が用意してくれたんだって言ってた。取材のあと、一緒にどら焼きを食べたんだ。で、俺と知り合いってことも芹花から聞いたって言ってた」
「そうだったんですか。あ、でも、知り合いって言わないほうが良かったですか?」
「え、どうして?」
「だって、悠生さんのような有名人と私じゃ合わないっていうかおかしいっていうか」
まごつく芹花に、悠生は苦笑した。
「前も言ったけど、生まれた家はそれなりに有名でも、俺自身はまだまだ半人前で修行中。比べられる理由なんてない。記者さんたちがいい子だって絶賛してた芹花と知り合いで、誇らしかったくらいだ。それに、どら焼きもうまかった」
「そうですよね、あのどら焼きは本当においしいんですよ」
芹花は、これほどおいしいと言ってくれるのなら、悠生のために用意しておこうと思った。
「だけど、〝うちの慧太先生〟って、ひっかかるな」
スマホの写真を確認しながら、悠生が低い声で呟いた。
「え、どうして?」
「いや、いいんだけど。仕事だとはいっても、俺以外のオトコを〝うちの〟って口にされるとムカつくな」
軽く睨まれるが、意味が分からず芹花は首をかしげた。
すると、悠生は小さく息を吐き、芹花の頭にポンと手を置き軽く撫でた。
「……それより、さっき送ったこの写真を見てみろ。ブライダルフェアに来てるってひと目でわかるから、俺と芹花が結婚を考えている恋人同士だと思ってもらえるんじゃないか?」
「え、それは、まずいんじゃ」