極上御曹司に求愛されています
「まさか、橋口君は竜崎楓のファンなの? 会いたかったりして」
「な、何を……ってごまかしても仕方ないよな。そりゃ、あれだけキレイなんだから、ひと目見たいと思うだろ?」
当然だとばかりに言い切る橋口に、芹花はふふっと笑った。
彼の反応は、多くの男性が見せる反応に違いない。
超がつくほど有名な世界的モデルで、同性の芹花でさえ憧れているのだ。
そういえば、と芹花は思い返す。
アマザンホテルで竜崎楓を見かけた時、悠生もわずかに緊張していた。
古くからの知り合いだと言っていたが、懐かしいという様子ではなかった。
いつも上がっている口角がぎゅっと結ばれ、細められた瞳は揺れていた。
その時は、突然目の前に竜崎楓が現れて舞い上がり、他のことは落ち着いて考えられなかった。
けれど、やはりあの時の悠生は普段と違っていた。
懐かしい知り合いに再会して喜ぶ様子はではなかったが、男性特有の照れだったのだろうか。
「じゃあ、とりあえず出版社に連絡してくるよ。きっと編集部は大喜びだぞ、なんといっても竜崎楓のオビコメントだもんな」
よっぽどホッとしたのか、それとも楓に会えるのが嬉しいのか。
橋口は弾むようにその場をあとにした。