極上御曹司に求愛されています

「竜崎楓がオビのコメントか……。私の幸運はどこまで続くんだろう。ちょっと怖い」
 
芹花は席に戻る途中で上司にオビのことを報告し、仕事に戻った。
急いで仕事を片づけなければならないとわかっていても、絶えず頭に浮かぶのは、美しい楓と並んでも決して引けを取らない極上の御曹司、悠生の姿だった。

「並べば圧巻の二人……」
 
芹花の胸は、微かに痛んだ。

その日の夕方、芹花と橋口、そして何故か所長の三井までもが楓の撮影現場を訪れた。
普段より軽やかな足取りの三井を見た芹花は、楓のファン層の広さに笑った。
出版社からも二人が同行し、ちょうど休憩に入っていた楓と挨拶を交わした。

「今日はわざわざすみません。竜崎楓と申します。こちらの都合に合わせてもらって、本当にありがとうございます」
 
楓は芹花たちに向かって深々と頭を下げた。
撮影中ということで、美しく施されたメイクやハイブランドのものだろう質のよさそうなパンツスーツを着ている楓はため息が出るほどキレイだ。
ハイヒールを履き、長い黒髪を無造作におろしている姿は美しいだけでなく凛々しく格好いい。

「それに、オビのコメントは絶対に私が書くって強引に進めてしまってすみません」
 
心底申し訳なさそうに謝る楓に、芹花だけでなく橋口も「いえいえ、そんな」と慌てた。

「私、本当にあのHPのイラストが大好きで、毎月新しいイラストに更新されるのを楽しみにしてるんです。だから、たまたま編集部に顔を出した時に見本誌を見つけて飛び上がって喜んじゃいました」
 
そう言ってくしゃりと顔を崩して笑うと、メイクのせいかクールな印象だった楓の表情が一気に温かいものに変わった。



< 134 / 262 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop