極上御曹司に求愛されています

有名モデルだというのに、今日といいアマザンホテルで会った時といい、楓は腰が低くて親しみやすく、芹花はますます彼女に惹かれた。

「えっと、あなたが作者の方ですか?」
 
楓が芹花たち三人に順に視線を向けたあと、芹花に向かってそう問いかけた。

「あ、はい……。天羽芹花と申します。私があのイラストを描いています。すみません、こんな感じで」
 
楓の美しさに圧倒されていた芹花は、通勤によく着ているライトブラウンのハーフコートをしわを伸ばすように撫でた。
今日会うとわかっていれば、滅多に袖を通すことのないお高いコートを着てきたのに、とあたふたする。
それに、化粧だってもう少し念入りにしたのに。
楓は顔を赤くしてうつむく芹花をじっと見ていたが、間違いないとでもいうように口を開いた。

「この間、お会いしましたよね? アマザンホテルで悠生と一緒にいた方ですよね? え、あのイラスト集の作者さんて、悠生の恋人だったの?」
 
楓に顔を覗き込まれ、芹花は慌てた。

「あの、恋人と言うわけでは……。でも、覚えてらっしゃいましたか」
「ふふ、悠生が大切そうに手をつないで、私と会っても離そうとしないなんてびっくりしたから。それに、とてもかわいらしいから、うちのスタッフのひとりがあの女性は誰だってうるさかったの」
「かわいらしいって、私が、ですか? 悠生さんじゃなく?」
 
言われ慣れない言葉に、芹花はきょとんとする。

「まさか、悠生がかわいいなんておかしすぎる。彼はどう見てもクールなイケメン。おまけに超がつく御曹司だし」
 
楓はおかしそうにそう言って、くすくす笑った。
悠生は古い知り合いだと言っていたが、かなり親しい関係らしい。



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