極上御曹司に求愛されています

その日、芹花は久しぶりに悠生との夕食を楽しんだ。
師走を迎え、悠生からは仕事がかなり忙しいと聞いていたが、毎日メッセージや電話のやりとりは続けていた。
悠生からたまたま予定が変更になり時間ができたと連絡があったのは今日の夕方。
悠生と一週間ぶりに会えることに心は弾むが、楓と付き合っていたと聞いて以来、ついつい自分と悠生とではやっぱりつり合わないと考えては、どっと疲れていた。
悠生と自分は付き合っているわけではないのに勝手に悩んで疲れるのはおかしいと思うが、悠生が好きだと気づいた今、その疲れから逃げられない自分を持て余していた。
必要以上に疲れる理由はわかっている。
ここ最近、竜崎楓の姿を何度もテレビで観ているからだ。
彼女はフランスでのファッションショーに出演し、大きな話題となっている。
長身に加えて九頭身という恵まれたスタイルを存分に生かし、与えられた服すべてを魅力的に着こなす。
特徴的な濃いメイクを施してもなお、彼女の瞳の強さやショーに対する覚悟は圧巻で、その姿は日本にも連日届けられていた。
テレビに楓の姿が何度も現れれば、楓を忘れることは難しかった。
そして、諦めた。

「せっかく仕事が早く終わったんだから、家に帰ってゆっくりしたほうが良かったんじゃないですか?」
 
芹花は少し痩せた悠生の体を気遣った。
終電でも帰れない日もあるほど多忙な悠生が心配で仕方がない。
それに、付き合っているわけではないのだから、芹花のために時間を作る必要もないのだ。

「ひとりでゆっくりするより、芹花と二人で出歩く方が体調にはいい」




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