極上御曹司に求愛されています
「ほんとだ。十八時からってことは、披露宴が十三時からだから間に合いそうだけど。え? こんな大型書店、地元にあったかな」
芹花は予定表に書かれている開催場所を見て首をかしげた。
そこには全国展開している大型書店の名前が書かれているが、地元になかったはずだ。
「あ……そういえば」
綾子や杏実が大型書店が近々オープンすると言っていたことを思い出した。
その書店は全国に幾つもの店舗を構えているが、地元の店舗は系列店の中で初めての二十四時間営業の店舗だとも言っていた。
「そうか、ここでサイン会をするのか……」
「ちょうどイラスト集の発売日と書店のオープン日が重なってるんだ。出版社も昔からお世話になってる書店らしくてさ、開店祝いというわけじゃないけど、ちょうど天羽の地元だし、一発目のサイン会をそこですることになったんだってさ」
「すごい偶然。でもあの地元に人が集まるのかな」
自分のサイン会が開店祝いになるのだろうかと芹花は心配するが、橋口は軽く笑い飛ばした。
「心配する必要はまったくない。天羽の地元って、最近高速道路が開通しただろう? それに合わせて郊外向けの大きなショッピングモールもオープンしたし、全国でも有名な飲食店が周辺に進出して、結構遠くからでも人が来てるらしいぞ」
「なるほど」
橋口の言葉に、芹花は頷いた。
地元はどんどん開発が進み、芹花が住んでいた頃とはまるで違うと綾子は言っていた。
だからこそ求人も増え、礼美の父親の会社を意識する必要もなくなっているのだ。
地元が盛り上がるのは嬉しいが、大学進学以来ずっと地元を離れている芹花は寂しくもある。