極上御曹司に求愛されています

その後、書店の奥に用意されたスペースで記者たちとの質疑応答が始まった。
記者たちに囲まれた芹花の隣には、オビのコメントを書いた竜崎楓が立ち、そしてもう一方の隣には、何故か悠生が立っている。
今世間を騒がせている三人が一堂に会し、記者たちの熱量は半端なものではない。
それに、予定にはなかったこの三人のショットに、出版社は大喜びだ。

「イラスト集の発売おめでとうございます。こうしてたくさんの方がサイン会にいらっしゃってますが、感想をいただけますか?」
 
記者からの質問に、芹花は緊張しながらマイクを手にした。

「予想以上の方に来ていただき、夢のように嬉しいですが、まだ実感はありません。ですが、このイラスト集が、たくさんの方に楽しんでいただければと思います」
 
想定通りの質問だったせいか、芹花はスムーズに答えた。

「では、その喜びは誰と分かち合いたいですか? お隣にいる木島悠生さんとご婚約されたと発表がありましたが、もちろん木島さんとはお祝いの予定があるんですよね」
 
待ってましたとばかりの勢いで、記者が悠生との婚約についての質問を始めた。
もう少しイラスト集についての質問が続くと思っていた芹花はがっかりしたが、これも予想していたもので、落ち着いて答えようとふっと息を吐き出した。
するとその時、悠生が芹花の手からマイクを引き取った。
「え?」
 
戸惑う芹花に、悠生は安心させるような笑顔を浮かべ、正面を向き話し始めた。

「イラスト集の発売に関する会見ですが、その前に私に少し時間をください」
 辺りを見回すようにそう言った悠生の言葉に、記者たちが一斉にカメラとマイクを向けた。



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