極上御曹司に求愛されています

楓のことだけでなく、芹花と悠生が婚約を発表してからの日々は猛烈に慌ただしく、思い出すのも難しいくらいの速さで何もかもが進んだ。
アマザンホテルでの結婚披露宴には国内だけでなく世界各国から重要人物が参列し、テレビやネットでしか見たことのない顔ぶれに足が震えたのも今では笑い話だ。
その披露宴で、当初の希望通り三井法律事務所の若手弁護士たちと椅子を並べた綾子は、隣に座っていた弁護士と意気投合し、今でも付き合いを続けている。

「さて、洗濯して、掃除を済ませなきゃ」

芹花はテレビを消し、ベランダからの景色を眺めた。
結婚してすぐに悠生のマンションで暮らし始めたが、出産を控えた今、木島家の本宅の敷地内に新居を建設中だ。
来月には完成し、秋には引っ越す予定となっている。
いよいよ木島家の嫁としての生活が本格化することになるが、意外にも芹花はそれを楽しみにしている。

「異世界に迷い込むって、こんな気分なのかも」
 
晴れ渡った空を見上げながら、芹花は肩を揺らして笑った。
その時、リビングのローテーブルの上で、スマホがメッセージの着信を告げた。
悠生からだろうと手に取れば、緑からのメッセージだった。

【台湾のお友達がつわりの時にも飲みやすいお茶を紹介してくれるっていうから、今から行ってくるわ。約束の時間よりも少し遅くなると思うけれど、待っていてね】

「え、今から台湾に行ってくるって……」



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