極上御曹司に求愛されています
芹花はメッセージを何度も読み返した。
緑と千春がお昼ごろ訪ねてくる予定なのだが、その前に台湾に行くのだろうか。
「お義母さんのことだから、きっとそうだ」
自分の思いつきに素直に行動する緑に、周囲の誰もがハラハラさせられているが、台湾程度ならまだましな方だ。
先月は成市の目を盗んでフランスに飛び、一週間オペラ座の住人のように過ごしていた。
今回もプライベートジェットに乗ってお茶を買いに行くのだろう。
緑のお目付け役とでも言える千春を伴って……。
芹花は緑の明るく弾んだ笑顔を思い浮かべながら返事を打ち込んだ。
【ありがとうございます。お茶を楽しみにしていますので、お気を付けて。出産後、私も連れて行ってくださいね】
芹花がメッセージを送ってすぐ、返事が届いた。
【台湾もいいのだけど、最近行ったスウェーデンもお勧めよ。またお誘いするわね】
「スウェーデンときたか」
いつもながらの予想外の答えに、芹花は肩をすくめた。
その時、再びスマホが音を鳴らした。
見れば、悠生からのメッセージだった。
【大丈夫か? なにかあればすぐに連絡しろ】
「家を出てからまだ五分も経っていないのに、心配し過ぎ」
芹花はそう呟いて、ため息を吐くが、その表情は穏やかで口元には笑みが浮かんでいる。
結局のところ、悠生からの愛情が嬉しくてたまらないのだ。
芹花はしばらく考えた後、写真を添えたメッセージを悠生に送った。
「懐かしくてびっくりするかな」
芹花はふふっと笑い、肩をすくめた。
【この時から、ずっと愛しています。そしてこれからも、変わらずに】
このメッセージとともに悠生に届いたのは、二人が初めて撮った料亭での写真だった。
泣きたくなるほど悠生の隣にいるのが嬉しそうな、芹花。
この時も今もこれからも、御曹司に愛される日々は続いていく。
完