極上御曹司に求愛されています
「あ、私のスマホ」
「ほら、ちゃんと見て」
芹花は悠生からスマホを取り返そうと手を伸ばすが、届かない。
悠生は二人の頭上にスマホを掲げた。
「その修くんが、芹花を手放したことを後悔させてやろう。俺ならその相手に不足はないだろう?」
耳に直接届いた悠生の言葉は甘く、芹花の体は大きく震えた。
これまで修と付き合った以外、友達であれ男性と親しくした経験のない彼女にとって、この展開は現実とは思えない。
悠生に抱き寄せられたまま、息を詰めた。
「撮るぞ。その赤い顔のまま、スマホを睨んでみろ」
「撮るって、どうして」
芹花が少しでも顔を動かせば、悠生の唇は彼女のそれに重なりそうなほどに近い。
それでも恐る恐る顔を上げ、悠生に言われるがままスマホに視線を向けた。
肩に感じる悠生の体温も、頬が触れ合う親密な距離も、すべてにどうしようと心で呟きながら数秒を待てば。
「俺が芹花をいじめてるみたいだな」
スマホの画面には、寄り添う芹花と悠生の顔が映っていた。
芹花を抱き寄せ余裕の笑顔を浮かべる悠生に抱かれた芹花の顔は桃色で、目は潤んでいる。
普段鏡で見る自分とは別人のような表情が、芹花は恥ずかしくてたまらない。
「いじめっ子……」