極上御曹司に求愛されています
第二章

「こんな週末を過ごすとは、思ってもみなかった」

お風呂を済ませた芹花は、アロマオイルの香りを楽しみながらこの二日間の緊張感を解いていた。
心身ともに慌ただしく、気を休める間もなく過ごした体は凝りに凝っている。
芹花はソファに寝そべりながら、ふうっと息を吐き出した。
既に日付が変わり、普段なら眠りについている頃を過ぎても、眠気を感じることもない。

「明日も仕事が休みで良かった」

「志乃だ」での食事を終えたあと、芹花と悠生はそこからタクシーで十五分ほど離れた場所にあるホテルのラウンジで、お酒を楽しんだ。
木島グループが経営するそのホテルは、高級ホテルとして有名で、宿泊客以外は入館できないことから興味があっても立ち入ることができない特別なホテルだ。
あらかじめ連絡していたとはいえ、顔パスで最上階のラウンジに向かう悠生の後ろ姿は堂々としていて、やはり御曹司なんだなと芹花は感心しながら、あとを追った。
そして、上質な内装と心地よい音楽に包まれながら飲むカクテルは、とてもおいしかった。
一緒に出されたベルギー王室御用達だというチョコレートも絶品で、そのおいしさに感激していた芹花のためにと、悠生は特別に包んでくれるよう頼んだ。

「ベルギー王室ってだけでわくわくしちゃう」

芹花はソファから起き上がると、テーブルの上のチョコレートを見つめた。
淡いピンクの箱に詰められたそれは光沢があり、輝いている。
ハートの形の小粒チョコが芹花のお気に入りだ。

「これは明日のお楽しみ。十粒あっても、すぐになくなりそうだな」

弾む声で呟き、その輝きにため息を吐いた。




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