極上御曹司に求愛されています
変わらぬ綾子の逞しさと優しさが嬉しくて、芹花は笑った。
大学進学を機に自宅を離れた芹花だが、綾子はそれからもずっと芹花のことを気にかけている。
それほど自分は頼りないのだろうかと不満もあるが、聞き慣れた綾子の強い声に、芹花はホッとした。
『礼美って、芹花から恋人を奪って結婚するだけじゃ満足できないのかな。披露宴まで招待して、よっぽど自分たちの幸せな姿を芹花に見せびらかしたいのか?』
興奮している綾子の声に、芹花は苦笑した。
「そんなことないと思うけど。地元の同級生みんなを招待してるから、私ひとりを呼ばないわけにはいかなかったんじゃない? それに、修くんと私はとっくに縁が切れて、別れて以来話をしたことも会うこともなかったし」
『それって礼美には関係ないよ。今までだって、気に入らないことがあったら親の力をちらつかせて自分の思い通りにやってきたんだし。地元に残って就職する子たちはみんな礼美の機嫌を損ねないように気を使ってさ。それにいずれ婿をとって社長に据えて、礼美は社長夫人だもん。ほんと、面倒くさい。芹花だって、礼美が社長の娘じゃなきゃ平手打ちのひとつやふたつ、礼美と元カレにしてやれたのに』
ひと息で言い切った綾子に、芹花は「綾子だったらひとつやふたつで終わらないね」と笑った。