極上御曹司に求愛されています

何度もそう考え、そのたび修だけが悪いわけじゃないと自分に言い聞かせてきたが。

『俺の方が絵の才能はあるのに。実力よりも運の世界なんだってこと、実感した』

最後に会った時に修から吐き捨てられた言葉が頭に浮かぶ。
向上心が強かった修にとって、芹花が有名法律事務所に就職したことは、かなりの衝撃だったようだ。
修自身も中堅とはいえ優良企業と名高い住宅メーカーに就職し、順調にデザイナーとしての実績を重ねていたが、芹花は誰もがその名を耳にしたことがあるほど有名な三井法律事務所に就職したのだ。
もちろん、弁護士としての採用ではなく、事務職としてなのだが、自分よりもいい就職を決めた芹花に、修のプライドは傷つけられた。
修は大学時代、あらゆるコンクールで大きな賞を総なめにしてきた。

『本当なら俺だって、もっといい会社に就職できるはずだったのに』

自分が希望していた企業に就職できなかった修は、どこでどう間違ったのだろうかと、唇をかみしめ芹花から視線を逸らした。
芹花と別れ礼美を選んだ修の、言い訳のような思いも含まれていたかもしれないし、言葉のすべてが本音だとは思わないが。
芹花は修の言葉を冷静に受け止め、反論することもなかった。
自分よりも修の方が優秀だというのは、大学時代からよくわかっていたからだ。



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