極上御曹司に求愛されています
けれど、芹花にとってはようやく決まった就職だ。
恋人である修に、喜んでもらえないのはとてもつらかった。
そして、そんな修の本音を聞いた後では、礼美から修を取り戻そうと思えるほど、芹花は強くもなかった。
『芹花? 聞いてる? 夜中だし眠いの?』
ぼんやりと修とのことを思い出していた芹花は、綾子の大きな声にハッと我に返った。
久しぶりに修との過去を思い出し、心は痛む。
「あ、ごめんね。大丈夫、起きてるよ」
『ほんと? まあ夜も遅いし、早く寝なきゃね。とにかく、受付は誰か探すから。芹花は気にしなくていいよ』
「でも、どうして誰も引き受けないのかな」
相変わらずはっきりしない理由に、芹花は首をかしげる。
受付くらい、礼美の機嫌を損ねないよう、誰かが手を上げそうなものなのに。
綾子はイラついているとわかる息を吐き出した。
『今回ばかりはみんな怒ってるのよ』
「え? なんで?」
綾子の不機嫌な声に、芹花は訳が分からず聞き返した。
『そりゃあ、今までも、礼美には大して面白くもない遊びにつき合わされたり気に入らないことがあったら八つ当たりされたりさ、いろいろとあったし面倒な思いをさせられてきて、ぐっと我慢してきたけど。今回ばかりはみんな許せないんだよ』
「許せない……?」
怒りを隠さない綾子の口調に、芹花は気圧される。