俺様上司の甘い口づけ


点灯式はもう明日というのに
今頃パンフレットを配って意味があるのかと

厳しい言葉を言われることもあったが
その日だって目にしてくれたお客様が足を運んでくれることだってある。

パンフ配りは今日まででいいと言われたが
前日の今日、今更と一概に決めれるものでもなかった。


“プルルルル♪プルルル♪”

時刻は6時を過ぎたところ。
化粧直しでもしよう近場のトイレにむかっているところだった

「はい?今度は…
『もしもし』

電話の向こうから聞こえてきたのは
陽気な智樹の声ではなく低く大人な成瀬さんの声だった

「成瀬さん?すみません
どうされたんですか?」

『あ、いや、今日の夜空いてるか?」

今日の夜?なんて間が悪いのだろう

「すみません、今日の夜は先約が…」

『そうか。ならいい』

「すみません。何か用事でしたか?」

『いや、別に。パンフは配り終わったのか?』

「はい、終わりました」

『助かった。明日も現場に来い』

「え?明日もですか?」

私が頼まれたことといえば
パンフ配りだけだから、
てっきり明日からはまた会社出勤かと…

『あぁ。せっかくだからお前も見とけ。
真島部長にも俺から伝えとく』

「わかりました。」

『じゃあ。切るぞ』

そんな声に名残惜しさを覚えながらも
電話を切った。

はぁ…智樹と約束しなけれなよかったな
なんて思ってしまった自分はこれから会う智樹にどんな顔をして会えばいいのだろう。
< 207 / 246 >

この作品をシェア

pagetop