『The story of……』
(……地図?)
陸奥くんが熱心に読んでいたのは、県内の地図だった。
そして地図をしばらく見つめた後、
ヘアカタログにマンガ、情報誌に懸賞雑誌……と次々捲っては元の場所にしまう、を繰り返している。
(…………)
何の脈絡も無さそうな雑誌に関連を見出そうと首を傾げていると、
(あっ、出てくるっ)
そのまま結局何も買わずに、陸奥くんはのんびりとした足取りでコンビニを後にした。
歩幅の大きな陸奥くんに、わたしは一定の距離を保ちながらついて行く。
(……どうせバレないよね? 陸奥くんはわたしのことは知らないだろうし)
なんて自分に言い聞かせながら、追っていた陸奥くんの足がピタリと止まった。
駅前に続く道にある、こじんまりしたペットショップ。
そのショーウィンドウの前で立ち止まった陸奥くんは、
(……遊んでる)
ガラス越しに、ゲージの中の子犬に手を翳しては反応を見て遊んでいる。
その表情は、眠っているときとはまた違った優しい顔付きで。
綺麗だけどどこか可愛いらしさのある微笑みに、わたしは釘付けになってしまった。