『The story of……』

こうして子犬と遊んだ陸奥くんは二~三度手を振った後、再び足を進めだした。



そのまま駅前からは遠回りになる公園に吸い込まれるように入って行った陸奥くん。



散歩する人や、ジョギングする人、遊んでる子どもたち。


たくさんの人で賑わう公園を陸奥くんは、変わらないゆっくりとした歩調で歩いていく。



まるでここの景色を全部目に映すかのように、陸奥くんは視線を右に左にと動かしていた。


(公園が好きなのかな)


公園の隅々まで見渡す陸奥くんを少し後ろから見つめながら、さっきからの彼の一連の行動の不思議さを改めて感じる。



「あれっ……」



そうして一瞬、視線と意識を余所に向けた間に、陸奥くんはわたしの視界から消えてしまっていた。



公園の入り口の方まで引き返しながらキョロキョロと辺りを窺うけど……あの目立つ風貌はどこにも見当たらなかった。


(見失っちゃった……)



どうせ駅前までにしておこうと思ってたのは確か。



もう良いかと諦めて踵を返そうとしたとき、



「っ!?」



突然、背後から肩を叩かれて思わず心臓が跳ね上がった。



バクバクと心臓が全身に鳴り響くまま振り返れば、怪訝そうにわたしを見下ろす陸奥くんの姿があった。


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