『The story of……』

驚きのあまり見開いた目で、陸奥くんを見上げるわたしに、



「キミは……ストーカー?」



発した第一声はこれだった。


(尾行けてたのがバレてるっ!)


「ち、違うよっ!」


とりあえずストーカー呼ばわりされたことは否定はしたものの、


「じゃあ……殺し屋。命狙ってる?」


眉間に小さくシワを寄せた不信そうな表情の陸奥くんは、


「それも違うっ。そうじゃなくて……」



「探偵? 追っかけ? 借金取り?」


緩い口調でわたしをやりこめてきた。

怒りこそ露わにしてないけど、不快な思いをさせてしまったことに変わりはない。


「勝手に尾行けてごめんなさい!」


だから、100パーセントの非を認めるつもりで、わたしはペコッと勢いよく頭を下げて謝った。



無言のままの難しい顔でわたしを見下ろし続ける陸奥くんに
、わたしは正直に思ったままを伝えてみる。



「陸奥くんいつも寝てるから……起きてるときは何してるのか気になって……」



それからもう一度、ごめんなさいと頭を下げた。


ずっと黙ったままの陸奥くんに、わたしはとにかく頭を下げたまま彼の言葉を待つ。



「正直に言って偉い偉い」


不意に優しく頭を撫でる感触でゆっくり上げた目線の先には、小さく笑った陸奥くんが飛び込んできた。


その不意打ちの笑みにトクンと胸が高鳴って、思わず反射的に赤らんだ頬を手のひらで押さえる。



「名前は?」


「二年一組、上総愛都」


「……同い年」


(どうせ童顔ですよ……)


驚いたような陸奥くんの反応に、一人心の中でやさぐれる。

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