『The story of……』
重ねた肌で得る体温は、独りぼっちを更に寂しくさせる。
温もりだけを求めて繰り返したところで、そこに本物の温もりは無いって気づかされてばかり。
「欲しいのはこれじゃいんだって……わかってるのに」
そう呟いて握り返してきた匠巳の指先に、わたしは握っていた手のひらに力を込めた。
「……眠れない時ここに温もりを求めて来てしまう。……女々しい?」
「……ううん」
繋いだ指先がもっともっと温もって欲しくて……わたしはパーカーのポケットに匠巳の手のひらごと入れてしまった。
「僕は喋るのが得意じゃない。……でも、人の温度が好き」
「温度?」
「人が集まる場所に出来る温度。喋り声、笑い声……泣き声も怒る声も聞こえる所に居ると落ち着くんだ」
(だから……いつもあんなに騒がしい所でうたた寝してたのか……)
「……匠巳」
「んっ?」
「だったらわたしが居るよ。寂しい時は、わたしが傍に行くよ」
わたしの言葉を聞いてはっとしたように、匠巳が目を見開く。
その目に映るわたしが、ユラユラと揺れているのが見えた瞬間。
「……うん」
その目がゆっくりと細められ、嬉しそうな顔で頷いた。
握っていた匠巳の指先はいつの間にか、わたしの手のひらの中で温かな温もりを生み出していた。