『The story of……』
後悔しても、もう遅い。
顔を上げた彼はパッと笑顔を浮かべ、
「じゃあ、明日からよろしくなっ」
どこから取り出したのか、マネージャー用のジャージを素早く手渡してきた。
(……確信犯?)
こうして、わたしの野球部臨時マネージャーとしての日々が幕を開けようとしていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
どうやら、元々居たマネージャーさんが入院してしまったらしい。
キャプテンや、同級生のチームメイトたちの助けも借りてなんとか仕事をこなしてる。
飲み物の補充や、簡単な洗濯。
たまに怪我の応急処置をしたり、顧問の先生からの連絡を取り次いだり……。
難しい内容では無いけど、何かと忙しい。
「上総さん。先生にアップ終わりましたって伝えて来て」
「はいっ」
キャプテンに促されて、わたしは飲み物の用意を止めて職員室に走った。
(あっ……)
職員室に向かう途中の廊下。
そこにはやっぱり、野球部の練習を難しい顔で見つめる名波くんが居た。
(名波くん、野球部に興味があるのかな)