『The story of……』
「聖午のことなら……そっとしといた方が良いよ」
「えっ?」
気まずげに視線を外した彼から返ってきた意外な答え。
そのまま彼は、そそくさと立ち去ってしまった。
その後、何人かにも聞いてみたけど……反応はマチマチ。
「関わんない方が良い」
「気になるなら本人に聞いたら?」
なんていう、間接的に諦めさせるように話を逸らす人も居た。
(やっぱり……野球部と関係があるんだ)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(あっ……また)
飲み物の補充をしようと、グラウンドから校舎に戻ったわたしの目に飛び込んできた姿。
いつもと変わらない視線で、野球部を見つめる名波くんが居た。
「見てるだけ?」
「っ……」
突然、声を掛けられた名波くんは面食らったようにわたしを見た。
「どうせなら野球部に……」
野球部と関わりがあるのは確か。
だったら見てるだけじゃなくて、歩み寄れば良いと……単純に思ってしまった。
「ふざけんなっ」
「っ!?」
(名波くん……?)
それが名波くんの逆鱗に触れたらしい。
彼の表情は、一気に厳しいものへと変わった。