『The story of……』
「二年の上総です。野球部の臨時マネージャーやってます」
「野球部……」
(あれ……)
野球部という単語で、原田さんの顔付きが変わる。
それはまるで……野球部を見つめる名波くんの表情に近い。
「名波くんのことで、お聞きしたいことがあるんです」
「名波……聖午のことで?」
名波くんの名前で、わたしを見る原田さんの視線が鋭くなる。
「場所、変えようか」
原田さんに促されるまま、わたしは誰も居ない生徒会室に通された。
「……聖午の何が知りたい?」
「野球部との関係です。……チームメイトはみんな口を噤んでしまって」
まるで腫れ物に触るかのように、みんなは名波くんの話題から逃げてしまう。
そして、野球部の名前を口にしたときの名波くんの反応。
ひどく苛立った彼の言葉の中には、何が含まれているのか……。
腕組みをして黙り込んだ原田さんの言葉を、わたしはじっと待ち続けた。