『The story of……』
「聖午はピッチャーだったんだ」
「……やっぱり野球を」
原田さんからの返答で、わたしの疑問は確信に変わった。
名波くんはやっぱり、野球部の部員だったんだ。
「どうして名波くんは、野球部を……」
あんなに熱心に野球部の練習風景を見ているんだ。
野球が嫌になって辞めてしまったようには思えない。
眉根を顰めたわたしに、原田さんは静かに言葉を続けた。
「練習中……アイツの投げたボールが俺の肩に当たった」
「えっ」
「それで……元々痛めてた俺の肩は、使い物にならなくなったんだ」
「っ!! ……そんな」
思わず口元を両手で覆う。
思いもしなかった名波くんの過去。
(だからあんなに……苦しそうな顔をしてたんだ)
そんなことも知らずに、軽い気持ちで名波くんに野球部の話を持ち出してしまった自分に腹が立った。
今更しても遅すぎる後悔に唇を噛みしめていると、
「でも、俺は聖午を恨んだりしてる訳じゃない」
少し表情が緩やかになった原田さんと視線が合った。