『The story of……』
「恨んだりはしてない。ただ……」
「ただ?」
原田さんの視線が、不意に窓の外へと向けられる。
原田さんが恨んだりしてないのなら、名波くんは……。
「俺は、それで野球部を辞めたアイツに腹が立ってる」
「原田さん……」
「俺の肩は遅かれ早かれ悲鳴を上げてたから」
だから、それをキッカケに聖午までが野球の道を諦めるのは間違ってる……原田さんはこう続けた。
「……名波くんには?」
「伝えようにも聞く耳を持たない」
原田さんの言葉を同情と受け取っているのか、名波くんは野球部に戻ることを頑なに拒否しているらしい。
「名波くん、本当は野球……忘れられないんだと思います」
「…………」
本当に野球を諦めたなら、きっと野球なんて見たくもないはずだ。
(まだ、未練があるんだ)
「もう一度だけ、名波くんと話してくれませんか?」
名波くんを野球部に戻せるのは、原田さんしか居ない。
原田さんの言葉なら、名波くんを野球部に戻すことが出来る。
そう信じてわたしは、今日も野球部を見つめる名波くんの元を原田さんと共に訪ねた。