『The story of……』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


廊下の窓越しに、野球部を見つめるいつもの表情。



「聖午……」


「っ!!」


小さく呼び掛けた原田さんの声に、名波くんの顔色が一変した。


苦しそうに眉間にシワを寄せ、視線を床に投げつける。



「聖午。俺は……」


「な、名波くんっ!」


原田さんが口を開いた途端、名波くんは身を翻してわたしに背を向けた。



足早に遠ざかっていく背中を、気付けば必死に追いかけていた。





「待って! 名波くんっ」


ようやく追い付いた名波くんの手を、夢中で掴んだ。


振り向くなりその手は解かれ、彼はわたしを恨めしげに睨み付ける。



「お願いっ! 話だけでも……」


「うるさいっ。何のつもりだよっ!」



キツい口調で言い放たれた名波くんの言葉。


折れてしまいそうになる心に、ぐっと力を込める。


「わたしは名波くんにっ」


「野球部に戻って欲しいって? なんでおまえにそんなこと言われなきゃなんねんだよっ」



強い強い拒絶。

(やっぱり、誤解してるよ……名波くん)



< 123 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop