『The story of……』
「そんな上辺だけのキレイゴト、お節介だって気付けっ」
さっきよりもっと険しい、名波くんの表情。
名波くんはお節介だって言うけど、こんな苦しそうな名波くんは見てられない。
「わかってるよっ!お節介だってことくらい! わたしはマネージャーだもん。退部届けも出さずに逃げ出す部員、見過ごしたり出来ないよっ!」
勢い任せに言い放った言葉で、名波くんの表情はますます険しさを増していく。
睨み付ける目の色が、憎しみを帯びていて……思わず怯んでしまいそうになった。
(……ここで退くわけにはいかないっ)
「臨時の癖に偉そうに言ってんじゃねぇよっ」
「臨時でもなんでもっ……わたしは自分のやるべきことはきちんとやるよっ。絶対に投げ出したりしない」
わたしの言葉は、野球から逃げる名波くんにはイヤミにしか聞こえないのかもしれない。
虚勢を張って握り締めた手のひらに、じわっと汗が滲んだ。
「だったら黙って部員の言うことに従え。もう関わるな。俺は野球はしないっ」
言い切った名波くんは、くるりとわたしに背中を向けた。