『The story of……』
野球に未練が無い人が……あんなに切ない表情で野球を見るだろうか……。
(名波くん……自分に嘘ついてる)
自分から野球を遠ざけてしまおとする名波くんが、わたしは悲しかった。
「……違う。しないんじゃない。出来ないんだよ」
「はぁ?」
この言葉が勘に障ったのか、足を踏み出そうとしていた名波くんが斜めにこちらを向いた。
(もう一度だけ……呼び掛けてみよう)
「また誰かを傷付けてしまうのが怖くて……ボールが投げれないんでしょ」
だからずっと、後悔と未練を引きずったまま……あの場所から動けないでいるんだ。
「知った風な口利くなっ。俺は野球なんかっ」
「だったら! なんであんなに悲しそうな瞳で野球部を見たりしてるのっ?」
「っ…………」
悔しそうに下唇を噛み締めた名波くんは、それなり口を噤んでしまった。
わたしの言葉は……名波くんに届いてるのかな?