『The story of……』
「ちょっと待って! なんで捨てるの?」
持っていたゴミ箱をその場に置き、何でもない顔して立ち去ろうとする八木くんに詰め寄った。
そんなわたしを八木くんは、
「うるさいな。おまえ」
鬱陶しそうに歪めた表情で溜め息をつき、見下ろしている。
「うるさくないよっ。捨てるくらいなら、受け取らなきゃ良いじゃないっ」
その態度がわたしの勘に障って、面識の無い八木くん相手に噛みついてしまう。
それが八木くんには不可解らしく、バカにしたように小首を傾げて見せた。
「お弁当作るのって大変なんだよっ。誰かの為に作ったことある?」
「知らない。勝手に作ってきといて食ってくれって言う方がおかしいだろっ。だいたい、他人が作ったものなんて気持ち悪くて食えない」
淡々とした口調と、あくまでも変わらない顔色。
どうしてこんな人が、女の子たちの人気を集めるのか……。
わたしは不思議で仕方なかった。
「そんな言い方って無いよっ。だったらちゃんと断れば良いでしょっ」
「俺に受け取ってもらえて満足してるんだ。余計なこと言って波風立てる必要は無いだろっ」