『The story of……』
「理事長の孫とか生徒会長だからって、お弁当捨てて良い理由にはならないでしょっ」
わたしの言葉はちゃんと耳に入っているんだろうか……。
八木くんはさっきから呆然とわたしの顔を見ているままだ。
「とにかく。食べないなら受け取らないでねっ」
(じゃないと……真実を知った彼女たちは傷付くはずだから)
効果があるかはわからないけど、もう一度だけ釘を刺して、わたしはゴミ箱を持って教室へと戻っていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あれから八木くんがお弁当をどうしているのかは知らない。
ただ、わたしが見かけないだけなのか……。
そんなことをぼんやり思いながら、放課後の廊下を歩いていた。
「二年一組、上総愛都さん。至急生徒会室まで」
(えっ!? わたし??)
突然の呼び出しに思い当たる節も無く、わたしはただその場に立ち尽くすばかり。
呼び出されたからには生徒会室を目指すしかない。
こうしてわたしは、一度たりとも入ったこともない生徒会室のドアをノックした。