『The story of……』
いつでも違う女の子を周りに引き連れてる八木くんに、手に入れられないものなんて無いんじゃないか……。
いつでも余裕な彼の顔を見ていると、そんな気さえしてくる。
横切っていく派手な喋り声を横目に見ながら、わたしはそんなことを思っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
人気の無くなった玄関で、わたしは脱いだ上靴を拾い上げていた。
すると、
「……上総 愛都ちゃん?」
見覚えの無い男の子が、優しい笑みを湛えながら名前を呼んだ。
多分、三年生の先輩。
でも、なんで名前をよばれたのか……思い当たる節は無い。
首を軽く傾げて見つめるわたしに、
「ハイ。落とし物」
差し出されたのは、わたしの名前と写真の付いた生徒手帳だった。
「あっ、ありがとうございます……えっと、……先輩」
差し出された生徒手帳を、お礼と共に怖ず怖ずと受け取る。
名前がわからないので、ちょっと言葉に詰まってしまった……。
「三年一組、九谷 優申(クタニ ユウシン)。……じゃあね、愛都ちゃん」
そんなわたしに見兼ねてか、九谷先輩は優しい口調でこう言い残して立ち去って行った。
いつでも余裕な彼の顔を見ていると、そんな気さえしてくる。
横切っていく派手な喋り声を横目に見ながら、わたしはそんなことを思っていた。
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人気の無くなった玄関で、わたしは脱いだ上靴を拾い上げていた。
すると、
「……上総 愛都ちゃん?」
見覚えの無い男の子が、優しい笑みを湛えながら名前を呼んだ。
多分、三年生の先輩。
でも、なんで名前をよばれたのか……思い当たる節は無い。
首を軽く傾げて見つめるわたしに、
「ハイ。落とし物」
差し出されたのは、わたしの名前と写真の付いた生徒手帳だった。
「あっ、ありがとうございます……えっと、……先輩」
差し出された生徒手帳を、お礼と共に怖ず怖ずと受け取る。
名前がわからないので、ちょっと言葉に詰まってしまった……。
「三年一組、九谷 優申(クタニ ユウシン)。……じゃあね、愛都ちゃん」
そんなわたしに見兼ねてか、九谷先輩は優しい口調でこう言い残して立ち去って行った。