『The story of……』
やっぱり雨は降り続いたままだった。



別館から本館に繋がる中庭の真ん中で、降りしきる雨を浴びながら立ち尽くしたわたしは後ろを振り返る。



(やっぱり……追いかけてはくれないんですね)



そこにわたしが思っていた姿は無かった。


わかっていたはずなのに、心のどこかでは期待していた自分がマヌケだ……。



このまま雨に濡れて、頭を冷やしたかった。



(……さようなら優申先輩。アナタの優しい笑顔が大好きでした)



そのまま本館の手前まで来た頃、体の力が急に抜け落ちるような感覚に襲われる。


「愛都っ!」



膝からがくっと崩れ落ちたと同時に、わたしの意識は遠のいていった。


間際、必死にわたしを呼ぶ声がしたのは……熱が生み出した幻聴だったのかもしれない。



幻聴でも幸せだった。

その声は、大好きな優申先輩のものだったから……。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


次にわたしが意識を戻したのは、温かな保健室のベッドの中だった。



見渡す限りの白に気だるさの残る体をゆっくりと起こせば、


「愛都ちゃんっ」


「あっ……」


名前を呼ぶ間もなく優申先輩に抱きすくめられてしまった。
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