『The story of……』

お姉さんたちに見つかったときの引きつった顔。


慌てて視線を避ける気まずげな顔。



わたしが知ってる聡利くんはそんな顔ばかりで……。



制服のボタンだって、つけてあげればきっと喜んでくれる……なんて期待してた。



わたしはただ、そんな聡利くんの笑ってる顔が見たかった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「可愛い髪型だねっ」



おはよーと、いつものように教室で挨拶を交わした遠野さんの雰囲気が違う。



綺麗にカラーリングしたセミロングのストレートヘアが、トップから一本の編み込みが作られ、斜めに纏められている。



前髪もふわっとポンパドールで、凛とした顔立ちの遠野さんによく似合ってた。



「これ? 放課後に遊びに行くからやってもらったんだ」



髪をまじまじと見上げるわたしにこう言って、遠野さんがにっと笑った。



「やっぱり、女の子の兄弟が居るって良いなぁ」



男兄弟しか居ないわたしは、こんな髪の毛のやり合いっことか服の共有とか……昔からすごく羨ましかった。



(さすがにお兄ちゃんじゃ出来ないもんね……)
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