『The story of……』
教室の奥から聞こえた少し面倒くさそうな声。



窓際からこちらに振り返ったそのは、あの時に見た遠野さんのお姉さんなんかじゃない。



「えっ……」



入り口に立ち尽くしたわたしを、驚き全開で呆然と見つめる聡利くんだった。



(なんで聡利くんが……?)



「な、なんでっ?」



「あのね、遠野さんが髪の毛をセットしてくれるように頼んでくれるって……」



まさか聡利くんだとは思わなかった。



困惑気味に答えたわたしに、聡利くんはやっぱり気まずげに顔をしかめている。




「今日の遠野さんの髪の毛、聡利くんがやったの?」



「……はい」



こう尋ねれば、聡利くんの表情はますます引きつっていく。



「すごいねっ! わたしなんて自分の髪の毛だって扱えないのに……」



だから、わたしは思ったままを素直に声に出した。


髪は伸ばしているものの、ろくにアレンジ出来るワケじゃないし……。



だからわたしは心底、聡利くんがすごいって感じる。
< 174 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop