『The story of……』
「……すごくなんか」
「じゃあ、もしかして……ボタンも自分で直したの?」
すっかり直された制服のボタンに、声を弾ませたわたしにタジタジしながらも確かに聡利くんは頷いてみせた。
「すごいよっ! わたし女の子なのに裁縫とか苦手だもんっ」
「いや、でもっ」
何度も感心してみせるわたしに、聡利くんは何やら言いたげに口ごもっている。
そんな聡利くんを見つめていると、
「すごく無いです……逆に、カッコ悪いし」
ポツポツと呟く声は如何にも自信がなさそうで、
「裁縫も髪の毛も……姉貴たちにやらされて出来るようになっただけで」
男の癖に情けない。
なんて吐き捨てた聡利くんの表情は、どことなく苦渋に満ちていた。
励まそうか、なんて考えが一番に浮かんだけど、
(そんなの、余計惨めになっちゃうかな……)
聡利くんのことをほとんど知らないわたしが言ってもきっと意味がない。
ちょっとだけ気まずい沈黙の後、
「でも、わたしはすごいって思うよっ」
出来るだけ自然に笑ってみせたわたしに、聡利くんの表情は変わらなかった。