『The story of……』

今更席を移るわけにもいかず、開けっ放しのカバンからペンケースを取り出し、ノートにペンを走らせた。




聡利くんを気にしつつも、練習問題に集中していたのも束の間。



下腹部にずっとある鈍い重い痛みが、段々と酷くなってきた。



(……薬飲んどけば良かったな)




「ちょっと外すね」



教科書に集中していた聡利くんにこう言い残し、財布と痛み止め片手に図書室を抜け出した。




わざわざ言い残す必要なんてなかったのかもしれない。



一緒に勉強してるつもりじゃないって言われればそれまでなのに……。



そんなネガティブな気持ちのまま自販機でミネラルウォーターを買い、痛み止めの錠剤を流し込んだ。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



(……居ない)



急ぎ足で戻った図書室に、聡利くんの姿は無くなっていた。




出掛けに残した一言も、ここに居るはずなんて思い込みも、わたしの勝手な希望。



ますます重くなる心と体に、広げたままのノートの上に思わず突っ伏した。



(少し落ち着いたら帰ろ……)
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