『The story of……』
「……大丈夫ですか?」
「えっ……」
遠慮がちわたしの肩に触れた手のひらは紛れもなく聡利くんのもので、
多分いつもより青白い顔をしたわたしを心配そうに見つめていた。
「保健室からすぐ戻るつもりだったんですけど……」
そう言って聡利くんが差し出してくれたのは、タオルにくるんだ湯たんぽだった。
「湯たんぽ……」
「あの、席外したときにカバンからあれがおちて……」
聡利くんが指差した先には、専用のポーチから覗く生理用品。
「顔色も悪かったから……つい」
最後にすみませんって付け加えた申し訳なさそうな顔。
受け取った手のひらから伝わる湯たんぽのほのかな温もりが、心と体の重みを吸い取ってくれる。
それで気付いたこと。
ずっと頭の中で反芻していた問い掛けの答え。
「……やっぱり聡利くんはすごいね」
「えっ?」
「すごく優しいよ」
わたしの出した答えに、聡利くんは頬を真っ赤にさせて、
「気が弱いだけです」
困ったように小さく笑った。