『The story of……』
夏の日差しが日一日と強まってきた頃。
再来週には始まる中間テストに、教室の空気はやや落ち着かなげだった。
割と楽天的なんだろうか。
わたしはあまりテストを意識する方ではないし、いつも通りに過ごしていた……はずだった。
「上総、ちょっと」
「はい……」
終礼直後。
名前を呼びながら、くいくいっと担任教師が手招きをしてくる。
(……なんだろう。テストのことかな)
テストを再来週に控えながら、いつも通りに過ごしすぎていたのだろうか……。
なんて頭の中に思い付く限りの可能性を浮かべ、担任の元に歩み寄っていった。
そこで言われた第一声。
「風紀委員に欠員が出てな。……悪いんだが、代わりにやってくれないか?」
思いがけない言葉に思わずポカンと担任を見上げてしまう。
確かに部活も委員会も所属してないけど……。
「どうしてわたしなんですか?」
「いや、中間前でも落ち着いてるから声が掛けやすかったんだ」
「…………」