『The story of……』
「下校時間過ぎてるぞ」
教室の入り口から掛けられた声で、机から顔を上げた。
そこに立っていたのは、
「福士くん」
帰り支度を整えた福士くんが、相変わらずの表情で立っていた。
「あと少しで切り上げるね」
キリの良いところで終わらせてしまおうと再び視線を紙に戻した時、
「あっ」
パチッという音と同時に教室の灯りが消え、視界は一気に暗がりへと変わった。
(…………)
もちろん、電気を消したのは福士くんだ。
問答無用で作業は中断になり、仕方無く机の上のモノをそそくさと片付けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
空はすっかり夕焼けを通り越して、夜へと移り変わっていた。
「…………」
「…………」
わたしが片付けるのを待ってくれた福士くんと、教室からずっと並んで歩いている。
でも、わたしたちの間には会話すらない。
むしろ、気まずい空気が流れているくらいだ。