『The story of……』
「確かに、アンケートの件は上総に一任したが」
突然、なんの脈絡も無く口を開いた福士くんをわたしは慌てて見上げてみる。
じっとわたしを見つめる福士くんの顔は予想通りで、
「無理はするな」
「えっ?」
淡々とした口調で告げられた言葉に、思わず小さく首を傾げた。
「困ったら頼れ。必要なら力を貸す」
「あっ……」
(励まして、くれてる?)
口調も表情も何も変わらないのに、何故かその言葉の中には温もりがあって、
「ありがとうっ。がんばるねっ」
わたしの胸はジワジワと高鳴っていく。
にっとはにかんだわたしに、
「だから、無理するなって言った所だ」
ちょっと呆れたように呟いた声は、いつもより優しい気がした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
福士くんに励まされてがんばろうって気持ちは高まってるのに、
「……なんか違う」
紙に連ねていく文章はなかなか思い通りにいってくれない。
(明日は締め切りなのに……)
机の上の時計だけが刻一刻と過ぎていくばかり。