『The story of……』
「原稿は上総一人で最後まで仕上げろ。後の人間で打ち込みと印刷をしていく」
「瑠戌っ」
制止する十二谷くんや、ざわつく委員を気に留めるでもなく、言い放った福士くんは、
「出来ないのか?」
鋭い眼差しでわたしに問い掛けてきた。
そんなの……答えは決まってる。
「最後までやらせてください」
決して福士くんからは目を逸らさない。
わたしを見下ろす福士くんの瞳を見据え、キュッと下唇を噛み締めた。
そんなわたしたちを、十二谷くんを含めた委員たちが固唾を飲んで見守っている。
「当たり前だ。……じゃあ全員作業開始」
福士くんの一声で、その場に居た全員が一気に動き始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
委員たちはパソコンへの打ち込みと印刷に分かれ、風紀会議室にはわたし一人が残されていた。
静まり返った部屋の中で、ただ無心にペンを動かしていく。
福士くんの冷たい瞳と口調。
気丈に振る舞っていたけど、ホントは泣いて逃げ出してしまいたかった。
(せっかく、福士くんが励ましてくれたのに……)