『The story of……』
ふっと眼鏡の奥の顔が柔らかくなり、綺麗に畳まれたハンカチが差し出され、
「気付いてやれなくて悪かった」
優しい言葉を皮切りに、涙腺からは一気に涙が溢れ出した。
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なんとか原稿も書き上げ、必要数のアンケートを用意することが出来た。
「ありがとうございましたっ」
委員みんなに、わたしはひたすらお礼を告げていた。
「にしても、相変わらず委員長は厳しいなぁ」
三年生の先輩が冗談混じりに言った言葉に、みんな小さく笑ってる。
(確かに厳しいとこもあるけど……)
「元はわたしが悪いんだし、それに」
福士くんは何度も励ましてくれた。
厳しいだけじゃなくて、優しさだって同じくらい持ってる人だもん。
「えらく瑠戌の肩を持つんだね、上総さん」
「えっ、別にそんな」
慌てて否定したのが余計にしどろもどろになって、十二谷くんはクスクスと楽しそうに笑ってる。
(食えない笑顔だ……)