『The story of……』
驚いて顔を見合わせるわたしたちに歩み寄り、


「差し入れ」


笑顔で真新しいペットボトルを差し出してくれた。


「サンキュー」

「ありがとう、二塚くん」



二塚くんにお礼を言う市原くんの顔が、さっきまでより柔らかい。


笑顔で去って行った二塚くんに感謝しつつ、わたしたちは差し入れにありがたく口をつけた。



「二塚くん。こんな時間にわざわざ……」


時計を見上げれば、作業を始めて二時間は経過していた。


「はぁ……。あのバカ、また……」


「えっ?」



ペットボトルの蓋を閉めながら、時計を見上げた市原くんは小さくため息をついた。


「部活終わってから今まで、自主練してたんだ。多分」


「えっ!」


「ったく……。放っといたらすぐこれだ……。試合近いってのに」



呆れたような困ったような顔をした市原くんが、またため息をつく。


「ふふっ」

「……どうかした?」


二塚くんのことで一喜一憂して、百面相する市原くんに思わず笑みがこぼれてしまう。

そんなわたしを、市原くんは怪訝そうに見た。
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