『The story of……』
頼まれた保健だよりの数自体は多くなかったので、作業はすぐに終わった。


それを職員室の担任のところへ向かう途中、


「あっ……」


(二塚くんだ。何やってんだろ……)



保健室の近くでキョロキョロしている、練習着姿の二塚くんを見つけた。


「二塚くん」

「……上総っ」


呼び止めた二塚くんは、はっとしたようにわたしを見る。

よく見れば、振り向いた二塚くんの頬には大きなかすり傷が出来ていた。



「今日、浅見先生出張で居ないよ」

「そっか。じゃあ、部活戻る」


二塚くんは持っていたタオルで頬を押さえ、来た道を戻ろうと踵を返した。


(あのまま練習続けても大丈夫かな……)


「待って」

「えっ?」


気が付けば、とっさに二塚くんの腕を握って止めていた。


「わたしでよかったら……簡単な手当てくらいならするよ?」


わたしの申し出に、二塚くんは瞳を二~三度泳がせて口ごもる。


「はいっ。入って」

「あっ」


このままじゃきっと堂々巡りになるだけ。
ちょっと強引に、掴んでいた手を引いてわたしたちは保健室の中に入った。
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