『The story of……』
数分後。

「とりあえず、消毒とガーゼはしたよ」

「……ありがと」


傷口を覆ったガーゼを片手で二塚くんが躊躇いがちに触る。


「痛い?」

「いやっ、大丈夫。助かった」


窺うように顔を覗き込んだわたしに、二塚くんは小さく笑い返してくれた。


(二塚くん、こんな顔して笑うんだ)





「じゃあ、わたし職員室に用事あるから」


保健室を出たところで、こう言って二塚くんに背中を向ける。

そんなわたしに何か言いたげに、口を開いて閉じる二塚くんの表情が映った。



「……職員室行く途中だったの?」

「っ? うん。そうだけど……」


「……わざわざ、ありがとう」



こう言って笑った二塚くんは、さっきよりも柔らかい。


(なんだか……反応が新鮮だな。二塚くんって)



少し赤らんだ頬を隠すように、二塚くんは小走りでグラウンドへと戻っていった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


土曜日の午後。


担任に頼まれていた作業に、部活を終えた市原くんと取り組んでいた。



「悪い。ちょっと休憩」


模造紙にマジックを走らせていた市原くんが、こう言って机に突っ伏した。

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