『The story of……』
「大丈夫?」


サッカー部は練習試合を控えてることもあって、毎日遅くまで練習している。

市原くんはレギュラーだから、きっと更にキツい練習をしてるんだろな。


「大丈夫大丈夫。昨日徹夜してちょっと寝不足なだけだから」


顔を上げた市原くんがこう言って、ゆっくりと目を閉じた。
時計を見れば、作業を始めてから二時間は経とうとしている。


「じゃあ、ちょっと休憩しよ」


「……でも、寝てる間に一人で進めるのはナシな」



机の上にあった太字のマジックを、市原くんは全部腕の中に隠してしまった。


(寝てる間に進めようと思ったのに……バレてる)


そのままマジックを枕に、市原くんは小さな寝息を立てはじめた。

マジックが使えないから、仕方なくわたしも休憩することにした。


(……飲み物でも買って来よ)



気持ちよさそうに仮眠を取る市原くんを教室に残して、わたしは裏庭にある自販機に向かった。


「あっ……」


財布片手に一階に降りたわたしに、思いがけない光景が目に入った。



裏庭の壁に向かってひたすらボールを蹴る二塚くんの姿だった。
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