『The story of……』
「ねぇ、二塚くん。ちょっと付き合ってくれる?」


答えも聞かないままに、わたしは二塚くんの手を取って立ち上がっていた。




そのまま二塚くんを連れて学校を出れば、遊ぶには困らない状況はあらゆるところに転がっている。




「ちょっと歩こっか?」


「…………」



わたしの提案で、二塚くんと並んで歩き始める。


隣に居る二塚くんは、終始黙ったままで、一生懸命話しかけるわたしの言葉に相槌を打つばかりだった。



(いつもは部活に励んでいる時間だもんね)




しばらく歩いたところで、ふっと隣から気配が消えた。


慌てて後ろを振り返れば、二塚くんがそこに立ち尽くしている。



「……急に不安になったんだ」


「えっ?」


「俺は、諫音が居ないと何も出来ないんじゃないかって……」


ポツポツと、呟いていく二塚くんの声をわたしは真正面から受け止めていく。



「そしたら、怖くなった。……部活に行くのも、諫音に会うのも……」



二塚くんの声が、少し震える。

表情が暗かった理由。


(独りで抱え込んでたんだね……)



わたしはゆっくりと二塚くんに歩み寄り、距離を詰めた。
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