『The story of……』
声をかけることを躊躇って、立ち尽くしていたわたしを、


「愛都ちゃんっ」


いつもの人懐っこい笑顔をした、寅毅くんが振り返った。


どうやらショーウィンドウに反射して、わたしの姿に気付いたみたい……。



「何見てたの?」


いつも通りの笑顔を浮かべる寅毅くんにつられるように、わたしは慌てて笑ってみせる。


「ちょっとウィンドウショッピング。見るのはタダやからな」


そう言って軽く笑い飛ばす寅毅くんに、さっきまでの面影は微塵も感じられなかった。



「あげる人、いるんだ?」



(熱心に見てたし……もしかしたら彼女にあげるのかも)


何気なく問い掛ければ、



「俺の目の前にっ」


相変わらず軽い口調で、ウィンクを飛ばしてきた。


(……やっぱり、いつもの寅毅くんだ)


「もう……またそんなこと言って……」


「はははっ。本心本心っ」



こう言って笑う寅毅くんに呆れて、思わずため息をついた。



(あの悲しそうな表情……きっと、気のせいだよね)
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