『The story of……』

「何、考えてんだ?」


四谷くんの低い声が、険しくなった表情と共にわたしに問い掛ける。



「詮索するつもりは無いよ。何も聞かないし。だから……、お節介させて?」


わたしの申し出に、四谷くんは不可解と言わんばかりに首を傾げ、そして……、


「……お人好しだな。上総」


(あっ……)


小さく息を吐いた四谷くんが、目を細めた。
その手には、わたしが差し出したコピーの束がしっかり握られている。



「お隣のよしみだよ」


「……メンドーな性格だな」



「お互い様っ」



ずっと抱えていたヤキモキがすーっと晴れていく。


(良かった……笑ってくれて)


こんな風に笑ってくれる四谷くんが、噂通りの人になんて思えない。


だからわたしは、自分の目でちゃんと四谷くんを見たかったんだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「あっ」

「……あっ」



ある日の学校帰り。

たまたま通りかかった近所の大学病院の前で……出会してしまった。



「四谷くんっ」



制服姿の四谷くんに……。
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