『The story of……』
(なんで病院に……)


気まずげにわたしから目を逸らした四谷くんとの間に、微妙な空気が漂っている。


立ち去るにも不自然で、思わず立ち尽くしてしまった。



そんなわたしを、


「……時間あるか?」


「えっ?」



手招きする四谷くんに連れられて来たのは、小児病棟の個室だった。



「お兄ちゃんっ」


開かれたドアの中から、姿が見えるより先に聞こえた声。


窓から外を見ていた小さな女の子は、入り口から現れた四谷くんに駆け寄った。


「妹、さん?」


「美卯(みう)挨拶は?」



駆け寄ってきた美卯ちゃんに視線を合わせた四谷くんは、優しく頭を撫でる。


傍らに立つわたしに視線を移した四谷くんに促され、美卯ちゃんもこちらを見上げる。



「…………」


わたしと目の合った美卯ちゃんは、おずおずと四谷くんの影に身を隠した。


(恥ずかしいのかな……)


「……悪い。愛想無くて」


「お兄ちゃんも人のこと言えないでしょっ」



思いがけない切り返しに、きょとんとした後、



「あははっ。言われちゃったねっ」


「……笑うなっ」


思わず笑ってしまった。
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