『The story of……』
行き道で通った学校のグラウンドでは、大会前の練習に勤しむ陸上部。
見たくないって思うのに、つい探してしまう。
(なんだ、今日も居ないんだ)
そこに居なかった五木くんの姿。
(やっぱり才能のある人は……違うんだな)
そう思い、わたしは河川敷への道を急いだ。
「あ……」
河川敷の上まで来た頃。
不意に目をやったグラウンドに、わたしは足を止めた。
そこに居たのは、ストップウォッチ片手に何度も何度も走り込む五木くんの姿。
一人、河川敷のグラウンドで走り込むその表情はまるで……何かに追い詰められたように切羽詰まった顔をしていた。
(……五木くん、なんでわざわざここに?)
しばらく険しい顔で走り込む五木くんを見つめていた。
走っても走っても……五木くんの表情が晴れることは無い。
むしろ、どんどんと苦しそうに歪んでいく……。
それが、何故か中学三年の頃の自分みたいで見て居られなかった。