『The story of……』

行き道で通った学校のグラウンドでは、大会前の練習に勤しむ陸上部。
見たくないって思うのに、つい探してしまう。


(なんだ、今日も居ないんだ)


そこに居なかった五木くんの姿。


(やっぱり才能のある人は……違うんだな)


そう思い、わたしは河川敷への道を急いだ。




「あ……」


河川敷の上まで来た頃。
不意に目をやったグラウンドに、わたしは足を止めた。



そこに居たのは、ストップウォッチ片手に何度も何度も走り込む五木くんの姿。


一人、河川敷のグラウンドで走り込むその表情はまるで……何かに追い詰められたように切羽詰まった顔をしていた。



(……五木くん、なんでわざわざここに?)



しばらく険しい顔で走り込む五木くんを見つめていた。


走っても走っても……五木くんの表情が晴れることは無い。
むしろ、どんどんと苦しそうに歪んでいく……。



それが、何故か中学三年の頃の自分みたいで見て居られなかった。



< 89 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop